Born in Chichibu
一本のギターの背景には、その木が育った土地があります。
Pigeon Guitarsにとって、秩父は製作地を示すための言葉ではありません。
音の起点となる木が育った場所であり、Founder自身のルーツが息づく土地でもあります。
秩父 — 木の出自
荒川の上流が流れ、森が息づき、巡る四季が木を育てる土地。
そこで育った一本の木には、長い時間の積み重なりが刻まれています。
Pigeon Guitarsが大切にしているのは、木を必要以上に特別なものとして語ることではありません。
どこで育ち、どのように乾かされ、どのような手を経て一本のギターへと形づくられていくのか。
その始まりから完成までを、ありのままにたどることです。
欅——Zelkovaが、どこから来たのかを知る。
それは、その一本が奏でる音の始まりを知ることでもあります。


WHY ZELKOVA
なぜ、欅なのか。
日本では、あたりまえにあるものが、
少し遠くから見ると、ぜんぜんあたりまえじゃないことがあります。
身近すぎて、わざわざ価値を説明することもなかったもののなかに、
世界から見たら、とてもおもしろいものが眠っているんじゃないか。
Pigeon Guitarsは、そんなことを考えるところから始まりました。
続きを読む — Why Zelkova Close —
日本の木でギターをつくるなら、どんな木がいいんだろう。
最初に目を向けたのは、私自身のルーツでもある秩父でした。
まずは、自分の足元にあるものから探してみようと思ったんです。

秩父には、杉や檜がたくさんあります。
最初は、やっぱりこのあたりなのかなと思いました。
でも、ビルダーの岡田さんと実際に材を手に取りながら話してみると、「このままでは、弦のテンションを受け止めるには少しやわらかいよね」と。
もちろん、杉や檜にもいろいろあります。
木曽檜や吉野杉のように、一括りにはできません。
加工して強度を持たせる方法もあります。
ただ、私たちが知りたかったのは、加工によって別の性質を与えた木の音ではなくて、その木そのものが、どんな音を持っているのか。
ということでした。
秩父の木を使うことが目的ではない。
ちゃんと、ギターとしていいものをつくりたい。
その条件で、もう一度木を探していきました。
そこで目に留まったのが、欅でした。
Zelkova。
エレキギターにまったく使われていない木ではありません。
でも、アルダーやアッシュ、メイプルやマホガニーのように、誰もが知っているトーンウッドでもない。
むしろ、ほとんど語られてこなかった木です。
だから、単純に思いました。
これ、どんな音がするんだろう。
材を取り寄せて、岡田さんと触ってみる。
硬い。
かなり硬い。
これなら弦のテンションにも負けなさそうだ。
そのかわり、重い。

じゃあ、まず一本つくってみよう。
木の性格をなるべくそのまま知りたかったので、最初につくったのは、ベーシックなシングルカッタウェイのソリッドギターでした。
そして、音を出してみた。
そこで、ちょっと驚きました。
音の立ち上がりが速い。
ピッキングした瞬間の反応には、アッシュを思わせるキレがある。
でも、それだけじゃない。
中域には厚みがあって、重心が低い。
マホガニーを思わせるようなコシと粘りを感じる。
甘いクリーンも出る。
歪ませれば、ちゃんと前に出る。
ソリッドボディなのに、少し箱物を思わせるような、ふわっとした響きまで感じる。

その一本に使った欅は、天然乾燥された材でした。
人工乾燥は、とても優れた技術です。
現代のエレキギターづくりでは、ごく自然な方法でもあります。
ただ、私たちはこの一本を弾いて、天然乾燥された欅という木に、強く惹かれてしまった。
速いのに、太い。
ソリッドなのに、どこかアコースティックなエアー感がある。
知っているギターの音を思わせるところはあるのに、そのどれとも少し違う。
そのとき、
欅は、日本の木だから
使うのではなく、
ギターの木として、
すばらしい。
そう確信しました。
欅は、昔から日本の建築や暮らしを支えてきた木です。
寺社や家屋にも使われ、長い時間、人のそばにあり続けてきた。
そして、秩父にもこの木が育っている。
自分のルーツにある土地の木が、ギターにすると、こんな音を出す。
それは私にとって、ただの偶然では終わらせたくない発見でした。
だったら、この木で、まだ世界のどこにもないギターをつくってみたい。
日本で生まれたこの音を、世界に向けて音楽を発信している人に弾いてもらいたい。

それが、Pigeon Guitarsが欅——Zelkovaを中心に据えた理由です。
出発点は、秩父でした。
でも、秩父の木なら何でもよかったわけではありません。
木を触り、音を聴き、つくって、また考える。
その先で、私たちは欅を選びました。
土地への思いと、ギターとしての必然。
そのふたつが、一本の木で重なった。
Pigeon Guitarsにとって、それがZelkovaです。
200〜300年を生きた欅
Pigeon Guitarsが向き合うのは、秩父の山で長い年月を重ねてきた欅——Zelkovaです。
芽吹き、枝を伸ばし、幾度もの季節を越えてきた木。
その木目や重さ、響きには、短い時間では生まれない個性があります。
樹齢だけを価値として語るのではなく、一本ごとに異なる木の表情を見つめ、その木の響きがギターとして最もよく立ち上がるように、一本ずつ組み上げていきます。


風と季節に委ねる天然乾燥
伐採された欅——Zelkovaは、すぐに楽器になるわけではありません。
ヴァイオリンづくりでは、木材を自然の風に委ねて乾燥させることが大切にされています。Pigeon Guitarsはその考え方から着想を得て、天然乾燥を経た欅のみを使用しています。
風が通り、季節が巡る場所で、急ぐことなく水分を抜きながら、木が少しずつ落ち着いていく。
その時間を経た材と向き合い、重さ、硬さ、響き、手に取ったときの感触を確かめながら、その木がギターとして最もよい状態で鳴るように、一本ずつ組み上げていきます。

工房 — 形になる場所
製作を担うのは、千葉県は松飛台に工房を構える、O.CRAFTの岡田さんです。
ギターだけでなく家具の製作にも携わり、長く木と向き合ってきた、木に精通した木工職人でもあります。
木を見て、削り、組み、塗り、弦を張り、音を確かめるところまで。
素材の状態や癖を読みながら、その木が持つ響きをできる限り引き出し、一本の楽器へと仕上げていきます。
機械の精度が生きるところ。
人の手と感覚でなければ届かないところ。
その両方を行き来しながら、木の個性と弾き手の感覚を、一本の中に結んでいきます。

“Born in Chichibu”について
私たちは、Pigeon Guitarsを “Born in Chichibu” と表現しています。
それは、すべての工程が秩父で行われるという意味ではありません。
秩父は、木が育ち、音の起点となる場所です。
工房は、その木を一本の楽器として形にする場所です。
Pigeon Guitarsにとって大切なのは、音のルーツをありのままに伝えることです。
